親しくない人と会わないストレス

COVID19対策として対面授業がなくなり、会議も原則ZOOMになり、外出を減らし在宅で仕事をすることが増えました。家ごもりをしているとストレスが溜まります。そのストレスの要因のひとつに「親しくない人との対面が減ったこと」に対するストレスがあるのではないかとふと思いました。

家ごもりは気づまりします。親しい人となかなか会えないのは寂しいです。しかし、一方で、活動自粛のおかげで、めんどうな会議に出たり、職場でさして親しくもない人と接する必要がなくなり、かえって気楽だ、という面もあります。そんなふうに思っていたのですが、何度か大学の会議にzoom参加して、少し別の印象を抱くようになりました。

親しい人とは、しばらく会えなくてもわりと平気です。なんならオンライン飲み会でもそこそこ楽しめます。次に会えるときを楽しみにすることもできます。

けれど、親しくない人と会わないでいると、少しずつ不安が増えてきます。正確には、「とくに親しいわけではないが、職場で日常的に関わり合う人」です。要するに職場の人間関係です。

関わりを断っても別に不都合のない相手であれば問題はありません。しかし、職場の人とはそういうわけにゆきません。対面することがなくなった分、メールのやりとりは増えます。そして会議はzoomです。一対一で電話をすることもあります。要するに、対面コミュニケーションから非対面コミュニケーションに切りかえていくわけです。

親しい人となら、対面しなくても十分な信頼関係があるので耐えられる。けれど、「そうでもない人」とは、メールだけではちゃんと意思疎通できているかいまひとつ自信がもてない。また、zoom会議でも、画面ごしではやはり相手の反応がピンとこない。だからzoom会議は余計に疲れます。これがストレスになっているような気がします。

チンパンジーのオスどうしが頻繁に挨拶をするのは、すごーく仲良しだからではなく、むしろ互いに互いを心から信用していないからでしょう。また、古い論文ですが、ニホンザルのメスは出産すると血縁個体との毛づくろい時間を減らす一方、血縁のない個体との毛づくろい時間は減らない、という研究もあります ( Grewal 1980)。

考えてみると、親しい人にはメールを一本入れておけば済む用事でも、初対面の人には電話をしたり、場合によっては直接面会してお願いすることもあります。対面交渉は、「さして親しくない場合」に重要性を増すものなのかもしれません。

竹ノ下祐二
竹ノ下祐二
理学療法学科 教授

専門分野:人類学・霊長類学、生物多様性保全学、子ども学

関連項目