org-captureの設定(OrgmodeでGTD)

この記事では、GTDのファーストステップである「収集(capture)」を Emacs org-modeで行うための設定を解説します。

多くのGTD解説サイトが誤って紹介していますが、GTDは作業の効率性を高めるテクニックではありません。 本家GTD本にはそのことが明記されています。GTDは 目の前の作業に没頭するための方法論 です。

著者のデイヴィッド・アレンは、人々の生産性が上がらないのは(あるいは、人々が自分が生産的でないと感じるのは)仕事のやり方が悪いからではなく、目の前の作業に没頭できないからだと主張します。なぜ没頭できないかというと、何か一つのことをしながら、「しなければならない別の何事か」が思い浮かんで、そちらが気になってしまうからです。そして、なぜそれが気になるかというと、今やっている仕事に一区切りついた時にはそのことを忘れてしまっているかもしれない、と不安になるからです。その結果、今まさに作業中のことから気持ちが離れてしまうために、はかどらなかったりミスをしたりする。読書だったら読んだことが身につかなくなったりする。

人によるのかもしれませんが、この状態は私にはとてもよく当てはまります。いつも何かに追われている感覚に囚われていて、ストレスから解放されることがない。頑張っていないわけではないのにはかどらない。それで、作業効率を高めるいろんな仕事術に手を出すのだけれど、どれもこれも手応えがない。

この状態を脱却するためには、作業中に思い浮かんだ「しなければならない別の何事か」はとりあえずどこかにメモしておき、作業に一区切りついたらそのメモを読むようにすればいい、というのは誰でも思いつくことです。そうすれば安心して現在の作業に没頭できる。ところが、気が散りやすい私は、作業に一区切りがついた時にはそのメモのことを忘れてしまっているのです!なんとも恥ずかしい有様ですが、これは仕方のないことです。何かに没頭するとは他のことを頭から追い出すことなので、忘れてしまって当然です。

メモそのものを忘れてしまう問題は、メモを取る場所を決めることで解決します。これもまた当然のことですが。「しなくてはならない別の何事か」は、見つけるたびに拾い上げてそれを一箇所に集めてしまうのです。これがGTDの最初のステップ「収集(capture)」です。書き留めることも大事だけれど、それを一箇所に集めてしまうことの方がもっと大事。

でも、決めた場所を守るのはけっこう大変です(少なくとも私には)。決めた場所を守りやすくするには、いつどこにいてもそのメモ帳をさっと開けるようにしておくことが何より大事です。ここでorg-modeの力を借ります。

org-modeには org-captureという機能があります。Emacsの初期設定ファイルに以下の記述をすることで、何の作業をしていてもワンタッチで inbox.org というファイルにOrgmodeの見出し項目としてメモを取ることができます。

(global-set-key (kbd "C-c c") 'org-capture)
(setq org-capture-templates
      '(("c" "収集"
         entry (file "~/Dropbox/inbox.org")
         "* %?\n %U\n"
         :empty-lines 1)

1行目で、org-captureコマンドに C-c c というキーバインドを割り当てています。2行目以下は、メモの雛形です。org-captureでは複数の雛形を準備することで、メモとりの作業を簡略化できます。ここでは「収集」という雛形を準備しました。この雛形では、Dropbox上の inbox.org というファイルをメモファイルとしています。雛形の記法の詳細は マニュアルにわかりやすく書かれています。ここで大事なことは、org-captureを使うことで、いちいちこのメモファイルを開く必要がないということです。

これでとりあえず「収集」を行う環境が整いました。

ところで、GTDの目的が「目の前の作業に没頭すること」であるというのは、 梅棹忠夫の「知的生産の技術」に通じるものがあります。梅棹もまた「整理や事務の技法を考えることの効能は・・・(中略)・・・けっきょくは能率向上につながることなのだが、大もとの目的は、落ちついてものを考える環境とつくることである。」と述べています(このことは 別記事に書きました)。私がGTDを導入しようと思ったのはこのためです。

知的生産の技術 (岩波新書) amazon.co.jp
竹ノ下祐二
竹ノ下祐二
理学療法学科 教授

専門分野:人類学・霊長類学、生物多様性保全学、子ども学

関連項目