野生ニシローランドゴリラにおけるメスの分散と繁殖成功 (Stokes et al. 2003)

Stokes EJ, Parnell R, Olejniczak C. 2003 Female dispersal and reproductive success in wild western lowland gorillas (Gorilla gorilla gorilla) Behav. Ecol. Sociobiol., 54:329–339, 2003 http://dx.doi.org/10.1007/s00265-003-0630-3

コンゴ、ンドキのベリ・バイ (Mbeli Bai) を訪れる複数のゴリラの集団を対象に、メスの集団間の移籍パターンを長期間にわたってモニターした研究。アカンボウの生存率を集団間で比較し、集団サイズ、集団中のメスの数との相関を調べ、メスの集団の移籍に影響する要因を検討した。

全体として、ベリのゴリラのメスは大きな集団から小さな集団に移籍する傾向がある。いっけん、大きな集団は集団内での資源をめぐるスクランブル型競争が強いからだと考えてしまいそうだが、メスの繁殖成功、アカンボウの生存率ともに、集団サイズによる違いはみられなかったので、採食競合が理由とはいえない。

ベリのゴリラの集団ははすべて単雄群なので、集団が大きくなるとオスの手がまわらなくなって子殺しリスクが高まる可能性もある。とはいうものの、ベリでは子殺しがあるにはあるが、アカンボウの生存率に集団サイズによる差がみられないことから、子殺しリスクが主要因とも言いきれない。

バイでの集団間の遭遇を観察していると、小集団の核オスやヒトリゴリラは積極的に大きな集団に接近してメスを獲得しようとしているようだ。大集団から小集団へのメスの流れはそうしたオスたちのメス獲得努力に負うところが大なのかもしれない。

### おぼえがき

集団サイズによってメスの繁殖成功に差がないというのは興味深い。実際、ムカラバでもゴリラの集団の遊動域は重複しているし、複数集団が出会うときも、食物パッチをめぐるニホンザルの群れ間闘争のような光景はみられない。また、集団はすべて単雄で、子殺しリスクにも集団サイズによる差がないとすると、メスの移籍は人口学的要因で決まっているのだろう。というのはとても穏当な解釈だけど、けっきょく何もわかりませんでしたと言っているのとあまり違いがない気がする。

もしメスが大集団を指向したら、小集団のオスやヒトリゴリラにとって、メスを獲得するのはたいそう難儀なことになるだろう。そうなると、マウンテンゴリラのように、オスは出自集団に留まったほうが得をするかもしれない。そうならないのはなぜか、それが知りたい。

竹ノ下祐二
竹ノ下祐二
理学療法学科 教授

専門分野:人類学・霊長類学、生物多様性保全学、子ども学